本殿の前に取りつく拝殿もユニークな建築である。
拝殿の中心の身舎(もや)は立ちが高く、屋根は檜皮葺で本殿の屋根に突き刺ささるような形態で本殿と一体になる。その身舎の周りの三方(前と左右)に裳階(もこし=庇のようなもの)で囲っている。この裳階の屋根は本瓦葺で本殿本体から切り離されている。したがって拝殿と本殿は下部では独立した別々の建築であるが上部の檜皮葺の屋根だけが合体しているように見える。
起源的に考えれば、もともと現在の本殿の中に人が礼拝する空間があったが、時代が下るに従い参拝者が増え、新たに大きな拝殿をつくった可能性もある。それで拝殿の形態が現在のように取って付けたようになっているのではなかろうか。
また、断面図を見てわかるように、拝殿から本殿にむかって床のレベルが徐々に上げられていて拝殿から本殿の中心部に行くまでに三つの階段を上がることになる。神空間と人空間を厳しく対比させている点もおもしろい。(才本)

拝殿と本殿の間には大きな隙間穴があり、そこから向こうの空が見通せる。

拝殿内部から本殿方向を見る。朱色に塗った部分が本殿。
拝殿の階段を上り本殿に入る。本殿内にも階段二つありそこを上がると本殿の中心部がある。
拝殿は神社の拝殿によくあるように四方吹き放しで外部との仕切りはない。