ジャコメッティが持つその独自のスタイルはどのように生まれたのでしょうか?
私はそのスタイルに至る過程を知りたくて豊田市美術館を訪ねた。
1935年(34歳)~45年ころ、ジャコメッティは「見えるものを見えるままに」つくろうとして、結果人物像が小さくなってしまった。私にはその認識や心情が理解できないのですが、本人はまじめに10年以上もの長い期間にわたり苦しんでいたようだ。その模索は「戦争により存在の根拠を失った人間そのもの、その危機的な存在そのもの」のあらわれで、それは同時代の彼の周辺の芸術家たちに共通のことであったらしい。
そのように長い期間の「見ることと造ることの葛藤」を経て1947年(46歳)の「大きな像(女:レオーニ)」で彼独自の細長く引き伸ばされたスタイルが生まれたそうだ。独自のスタイルを生み出すのに10年以上も悩み続けたということ、ここが一番私の感じるところだ。人生の中で大きな成果もなく10年を費やすことは誰にもできることではない。 (才本)