絵画本の紹介展示会アトリエひとりごと
もう一つの風景画浮世絵 北斎の富嶽三十六景
前回 広重の名所江戸百景を紹介した後
北斎の富嶽三十六景の制作時期が気になり調べることになりました
富嶽三十六景はかつて展示会*1)で見たこともあり
その時の図録によると
「富嶽」は制作時期はいまだ定まっておらず
遅くとも1831年(天保2年 北斎72歳)までには出版されたとされます
「名所江戸百景」よりは20年以上も前のことになります
図録によると「富嶽」以前から
広重など風景画を得意とする浮世絵画家はいたが
「富嶽」の出現は
風景画が美人画や役者絵と並ぶ一ジャンルと
なるようなインパクトがあったらしい
そして広重もその影響を受け
さらに特徴的な「近景拡大型」の構図を編み出した
その最終到達が名所江戸百景だということです
下図の尾張から見た富士を観ると
近景の樽の中の遠方に富士を見せていますが
広重の近景拡大型とは異なり
富士と樽を含めた光景をまとまりよく描いています
この風景のとらえ方もさすが巨匠ならではですが
広重の名所江戸百景はさらにダイナミックな
動的な表現が心を動かしますね
*1) 2008年松坂屋美術館「北斎 富士を描く」展